東京では桜が咲き始めていた頃、東北のその街は、まだ梅の時期で、桜はつぼみのままでした。

今年の初めに「あと半年」と言われていたそうですが、その街での桜にその人は間に合いませんでした。

血の繋がりはないけど、妻の母であり、僕にとっては義理の母であるその人は、桜を見る前に逝ってしまいました。

妻から訃報を聞き、小学生の娘と駆けつけると、これまで何回か行った一軒家で、義理の母は、まるで眠るかのように静かに目を閉じていました。

娘にとっては初めて身近な人の死。
二人で義理の母の前で線香を上げる時に娘に話しました。

「おばあちゃんは死んじゃったけど、魂は残っているからね。
ここに来ればまたおばあちゃんに会えるから」

そう話すと娘は言葉を発さずに何度もただ頷いていました。

お通夜の日、喪主である妻の兄は、かつて看護師だった母親について、「退職してからも人の面倒ばかり見る人だった」と集まってくれた人に話しました。

癌が見つかったのが去年の夏。
それを医者に告げられると、看護師だった義理の母は、自分の余命も分かったのか、自分一人で身辺の整理をして、自分一人で治療のための入院を決めたそうです。

「人の世話ばかりしていたのに母は誰にも世話にならずに、誰にも迷惑をかけずに逝ってしまいました」と。

告別式には百名を超える人が集まり、僕の知らないその人の歴史の中で、多くの人に愛されてきたことを感じました。

改めて義理の母がいたから、今の僕の娘が存在することにも感謝します。

残したものはたくさんあると思います。

癌の治療がきつくて「早く死にたい」と言っていたそうですが、もう痛みはなくなったと思うから、ゆっくり休んでください。

やっと、東北のその街では、桜が咲き始めました。

こうして毎年桜が咲き、それを毎年見ることが出来る僕たちは幸せなんですね。




 
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